雑談がうまい人は、話がうまいのではなく「覚えている」人
気の利いた話題を思いつく才能ではありません。前に聞いたことを覚えているだけです。最初の30秒で使う3つの型と、10秒で終わる記録のしかたまで。
雑談を次へつなぐ
この記事で、先に押さえる3つのこと
- 1
気の利いた話より前回の続き
- 2
記録は10秒で終える
- 3
相手の反応で止める
今日の会話から、次に聞ける話題を一つだけ残します。
「雑談がうまいですね」と言われる人がいます。その人が特別に話し上手なのかというと、たいていそうではありません。
前に聞いたことを覚えているだけです。
雑談の中身は「話の続き」
初対面の雑談は、天気か、その場の話題しかありません。だから難しい。 けれど2回目以降は違います。前回の話の続きから始められるからです。
- 「新工場の見学、日程は決まりました?」
- 「お子さん、受験どうでした?」
- 「パクチー苦手って言ってたよね、和食にしたよ」
どれも気の利いた話題ではありません。前に聞いたことを、そのまま返しているだけです。 それでも相手には「覚えていてくれた」として届きます。
覚えていないのではなく、思い出せないだけ
人と会う回数が増えるほど、一人ひとりの記憶は薄くなります。 名前と顔は出てきても、話した中身は出てこない。
気まずいのは、忘れたことではありません。相手は覚えていることです。
- 「例の件、どうなりました?」——例の件って、どれだろう
- 2回目なのに、また「お仕事は何を?」から始まってしまう
- 「今度おすすめの店を送りますね」と言ったまま3週間
覚えておくべきは4つだけ
全部を記録しようとすると続きません。次に会うときに効くのは、この4つです。
| なぜ効くか | いつ効くか | |
|---|---|---|
| まだ返していない約束 | 放置がいちばん信用を削る。返せば、それだけで差がつく | 会う前日 |
| 前回なにを話したか | 会話の入り口になる。ゼロから探さなくて済む | 最初の30秒 |
| 苦手なもの | 店選びで効く。避けられたことは、相手が気づく | 予約する日 |
| 家族・趣味 | 相手が自分から話した領域。触れても失礼にならない | 話が途切れたとき |
逆に、要らないものもあります。肩書きの正確な表記、会社の沿革、細かい数字。 次に会ったときの30秒で使わないものは、覚えなくていいのです。
最初の30秒で使う、3つの型
覚えていることを、どう口に出すか。型は3つしかありません。
① 続きを聞く(いちばん強い。相手が自分から話したことなので、外さない)
「新工場、そろそろ動き始めたころですか」 「前におっしゃっていた資格の試験、終わりました?」
② 覚えていたことを、行動で見せる(言葉より効く)
「パクチーが苦手だとうかがったので、今日は和食にしました」 「前回コーヒーだったので、同じものを頼んでおきました」
③ 自分の変化を報告する(相手に質問を押し付けない。返しやすい)
「あのとき相談した件、結局こうしました」
やってはいけないのは、覚えていることを言い当てにいくことです。 「お子さん、たしか高校3年でしたよね?」と確認から入ると、外したときに気まずくなります。 「受験、どうでした?」と中身から入るほうが安全です。
聞いてはいけないこともある
覚えておくと効くからといって、なんでも書き留めていいわけではありません。 病気、信条、家庭の事情のような、本人が話す気になったから出てきた話は、 次に会ったときに「こちらから」持ち出さないほうがいい種類のものです。
相手が自分から言い出したら受け止める。こちらからは開けない。 その線を引いておくと、記録することへの後ろめたさも消えます。
記録は10秒で終わらせる
続かない記録は、書く量が多すぎます。会ったあとに整った文章を書こうとすると、 3回目でやめます。
思い出せることを、そのまま口に出すだけで十分です。
今日は佐藤さんと打ち合わせのあと会食 ゴルフの話で盛り上がった ベストスコアは89らしい 息子さんが高3で来年受験 パクチーが苦手だと言っていたので店は和食に変更
句読点も要りません。あとから読み返せる形になっていれば、それでいいのです。
続けるための条件は3つです。
いつ 別れた直後。駅までの3分か、車に戻った瞬間
どこに 1か所だけに決める。分散すると、探す場所が増えて開かなくなる
どこまで 4つのうち、出てきたものだけ。全部埋めようとしない
相手に見られても平気な書き方にする
記録が続かない理由には、もうひとつ「見られたら気まずい」があります。 画面をのぞかれる可能性は、実際にあります。
- 評価を書かない(「話が長い」「押しが弱い」)
- 分類しない(「重要」「Aランク」)
- 事実だけを書く(「ゴルフの話」「息子が高3」)
評価を書き始めると、その見方が固定されます。 書いた本人が、次に会うときにその目で相手を見ることになる。 事実だけにしておけば、見られても困らず、自分の見方も歪みません。
才能ではなく、仕組みの話
雑談がうまい人を観察すると、多くは何らかの形で記録しています。 手帳、名刺の裏、メモアプリ。方法はばらばらですが、覚えておく作業を頭の外に出している点は共通しています。
話す力を鍛える前に、覚えておく係を用意する。そのほうが、はるかに早く効きます。
よくある質問
雑談が苦手でも改善できますか?
できます。2回目以降の雑談の中身は「相手の話の続き」なので、前回なにを話したかを覚えていれば、その場で考える必要がありません。覚えておく作業を外に出せば、話す力そのものを鍛えなくても会話は続きます。
何をメモしておけばいいですか?
覚えておくべきは4つだけです。まだ返していない約束、前回なにを話したか、苦手なもの、家族や趣味の話。この4つがあれば、次に会ったときの最初の30秒がつながります。肩書きの正確な表記や会社の沿革は、その30秒では使いません。
メモが続きません。
続かないのは、書く量が多いからです。会ったあと10秒で終わる形にしてください。整った文章にする必要はなく、思い出せることをそのまま話すだけで十分です。書く場所を1つに決めておくと、さらに続きます。
この記事を書いている人が作っています
覚えておく係を、外に持つ。
会ったあと話すだけで、覚えておくことと約束に自動で分かれます。次に会う直前に開けば、その人が1画面で戻ってきます。iPhone と Web。
10人まで。書き出しと削除は、どの段でもできます。